本社・外観
長年の光学研究・開発の技術蓄積により、世界トップクラスの技術力を保有する超高精度プラスチック・ガラス部品メーカーのナルックス株式会社。2022年に、「社員一人ひとりのITリテラシーの向上」を掲げた同社では、教育プログラムのひとつとしてマイクロソフト オフィス スペシャリスト(以下、MOS)を活用。
導入経緯や活用後の効果について、経営支援部 人事総務課 マネージャーの東 塁さんにお聞きしました。
MOS導入のきっかけをお聞かせいただけますか?
当社は光学分野のモノづくりを生業とする300人規模の会社です。2020年にコロナ禍に直面し、当社でもテレワーク導入をはじめとした業務変革やIT普及に伴う情報セキュリティ対策強化などが求められることに。そこで「社員一人ひとりのITリテラシーを高めること」が会社全体のITリテラシーの底上げにつながると考え、これを達成する教育計画を2022年から策定することとなりました。
そうしたなか、社外研修への参加や外部講師による社内研修をはじめ、ITに精通した社内スタッフによる勉強会等々も検討。しかし、社員間に存在するITリテラシーの格差を平たくするには、体系化され客観的な指標のあるIT資格の活用がコスト面でもスキルアップの効果面でも最適と考え、レベル1(すべての社会人の共通知識)のIT資格(下図参照)のひとつとしてMOSに取り組むことを決めました。
MOSの取り組み概要をお聞かせください
ITリテラシーの向上は全社員が取り組んでいますが、MOSの取得は入社3~5年目の100名ほどが対象になりました。所属部署や業務内容の異なる社員を20~25名ぐらいのグループに分け、「学習から取得までの期間を3カ月に設定」「受験料と対策テキストは会社が支給」「業務時間内の学習を許可する」「合格者にはライセンス手当として一時金を支給」と規定して、2023年3月からMOS取得の取り組みを開始。取得対象としたのはMOSのExcelエキスパート(上級レベル)です。大半の社員は業務でExcelを使っており、各部署では製品化のための実験データや計数管理等のさまざまなデータを扱っています。人事担当として複数の部署と接する機会が多く、また私自身もシステムエンジニア経験があるため、「もっと効果的なExcelの使い方を習得することで業務務効率が変わるのでは?」と感じられるケースがありました。そこで、さらなる業務スピードと品質向上につなげるため、Excelのより高度な機能を習得できる上級レベルを取得資格に設定。業務との兼ね合いで取得期間を変更した社員も多少いましたが、受験した7割超の社員が合格して資格を取得しました。
今回の取り組みで人事として気をつけたことはありますか?
MOSの取得は全社的な取り組みのなかのひとつなので、IT系のスキルを高めていくことの意義をはじめ、資格概要や受験申込方法などを伝える場として、3カ月の期間中に各グループに対して説明会を3回開催しました。MOS取得は、学習する時間を含め一人で粛々と進めることになります。そうした個々の取り組みを孤立させないよう、説明会で「自分以外の社員も同じように取得を目指している」ことを一人ひとりに実感してもらい、一体感をもって進めていくことに留意しました。
エキスパート(上級レベル)取得後の効果と変化を教えてください。
取得した社員にアンケートをとったところ
- ●「MOSに取り組んだ結果、これまで使ったことのない多くの機能を知ることができた。さっそく、いまの業務に応用して、覚えた機能を使っている」
- ●「出題範囲のなかには、日頃の業務で活かせそうな箇所が多々あり、勉強していて楽しかった」
- ●「いままで独学で覚えていたが、間違えて覚えていたことに気づけた点も多かった」
など、学習を通じて新しい機能を知って理解が深まり、「Excelというツールをもっと効果的に使いこなそう」という意識が高まったと感じています。同時に「資格試験の推進は向上心UPにつながる」「プログラミングのスキルも業務に役立つと思う」「見やすいプレゼン資料の作成方法も学びたい」といったコメントも寄せられるなど、リスキリングへの意識が芽生えてきました。会社が目指すIT/DX化にしっかりついていこう・前向きに取り組もうという社員が増え、社内全体の風向きが良い方向に変わってきたことを実感しています。
こうした状況を踏まえ、次の学びにはデータ分析の分野として「ビジネス統計スペシャリスト」の活用も検討していく予定です。Excelの機能を使いこなせるようになり、数字で傾向をつかみアプロ―チをしていく統計スキルが加わると、またワンランク意識が変わるのではないでしょうか。新しい学びを一つひとつ積み重ね、社内全体のITリテラシー向上につなげていきたいと考えています。
※掲載内容は、2024年6月取材時のものです。