2022年10月、岸田首相は所信表明演説で、「人への投資策」を今後5年間で1兆円に拡充すると言及しました。その中核をなすのが「リスキリング」。人的資本経営の議論拡大の契機となった『人材版伊藤レポート』では、人材戦略の共通要素の1つとして、「目指すべき将来と現在との間のスキルギャップを埋めていく要素(リスキル・学び直し)」が挙げられています。さらに、2023年3月期決算からの上場企業などを対象にした人的資本の開示義務化に伴い、企業のリスキリング推進に向けた動きは、より一層加速しています。2024年1月の岸田首相による施政方針演説では、持続的な賃上げにつなげる「人への投資」に関する文脈のなかで、今後も政府として、働く人の教育訓練やリスキリングを法制度の面から継続的に後押しすると言及しています。こうした背景から、いまでは企業にも個人にもリスキリングが広く認知されるようになりました。
リスキリングに対する公的な助成金も年々充実しています。厚生労働省の関連助成額は7年で12倍に増えました。さらに、2025年度までに、デジタル関連資格を中心とする支援対象の講座数を、現在より約6割多い300以上に増やし、助成率も最大8割に引き上げることが表明されています。
実際、オデッセイ コミュニケーションズにも「リスキリングにおすすめの資格試験は?」「リスキリングを目的に、資格取得をゴールにした研修プランを企画している」というご相談が増えており、企業研修における「リスキリング」推進についての関心の高まりを実感しています。ここでは、
など、企業の担当者の皆さまから数多く寄せられるご質問にお答えし、リスキリングへの理解が深まるように詳しく解説していきます。そして、実際企業現場で活用できるリスキングの導入方法や、オデッセイ コミュニケーションズが自信をもってご提供できるリスキリングにおすすめの資格5選もご紹介します。
日本におけるリスキリングの定義は、経済産業省2021年2月「デジタル時代の人材政策に関する検討会」によると、
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、 必要なスキルを獲得する/させること」
としています。移り変わりが激しい現代において単なる「学び直し」ではなく、「これからも職業で価値創出し続けるために必要なスキルを学ぶ」という点が強調されています。
大学やビジネススクールに入り直すなど、自分の意思でスキルを身につけることに主軸をおいているリカレントとは異なり、リスキリングは企業が主体となり、次代を見据えて新しいスキルを社員に習得してもらう学び方です。
注目されている背景には、大きく分けて2つあります。
現在、私たちの生活の至るところにIT技術が浸透し、世界のみならず日本経済においてもIT産業の存在感は高まっています。企業でも、この市場変化に柔軟に対応するため、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の実現が共通テーマとなっています。
しかし、現実はそれを担う人材の育成・供給が追いつかず、デジタル人材の慢性的な不足が課題となっています。日本社会全体の課題でもある人口減少や少子高齢化、業務の自動化(RPA)や技術革新が原因で雇用が失われる技術的失業なども起因して、2030年には最大約79万人のデジタル人材が不足するとされています(経済産業省「IT人材需給に関する調査」より)。
こうした中で、新たなデジタル人材を採用・教育することは企業にとって極めて困難になることが予想されています。ここから、既存の従業員一人ひとりが新たな知識やスキルを身につける「リスキリング」に注目が集まっているのです。
2020年開催の世界経済(ダボス)会議をきっかけに、経団連が2020年11月に発表した「新成長戦略」など、国内外問わず様々なところで「リスキリング」の必要性が叫ばれるようになりました。
加えて、日本政府が「デジタル田園都市国家構想」の基本方針案として、「デジタル人材を来年度からの5年間で230万人育成する」「企業の人材育成の取り組みを支援し、職業訓練や学校教育と連携させる」という目標を掲げたことも、リスキリングの注目に拍車をかけています。
実際、企業としてリスキリングに取り組み、導入するには何から始めればいいのでしょうか? まず、リスキリング導入までの流れを簡単にご説明します。
企業の事業内容や目標によって身につけるべきスキルや内容は異なります。目指す方向性や業績・事業内容などのデータを参考にして、目的や目標を設定します。
自社の従業員が現在保有するスキルと、従業員に求めるスキルを可視化することでスキルギャップを埋めることができます。
リスキリングの実践方法には、研修、オンライン講座、eラーニングなど、さまざまな種類があります。従業員に習得させたいスキル、希望する運用方法や予算に合わせて準備しましょう。
習得した知識・スキルを実践することで、従業員にリスキリングの効果を実感させることが大切です。時間をかけて得た知識・スキルを活かすことで、新たなリスキリングに臨む姿勢や学習意欲の向上につながります。
各ステップの詳細を見ると、「スタートするまでに多くの手間と時間をかけなければいけない」という印象を抱くかもしれません。オデッセイ コミュニケーションズでも「リスキリングに取り組みたいけれど、研修の企画立案に割く時間がない」といったご相談を企業様からいただくケースが多いです。
このような声に対して、オデッセイ コミュニケーションズがご提案しているのが「資格試験」を活用したリスキリングです。
資格試験を用いた研修は通常の研修に比べて、ゴールを明確に設定しつつ、すぐ取り組みをスタートできるのがメリットの1つです。対策テキストやWEB上で実施する模擬テストをはじめとしたオンライン教材を用いることで、自学自習を中心とした展開でも着実に実践力を身につけることができます。
リスキリング:資格活用の3ステップ
資格試験を活用した「リスキリング」でも、自社の従業員が現在保有するスキルと、従業員に求めるスキルを可視化し、スキルギャップを埋めることが大切です。
「スキルの可視化って、どのように取り組めばいいの?」という企業様には「オデッセイ スキルチェック」をご提案しております。スキルチェックでは、マイクロソフトオフィスアプリケーション、コンピュータやインターネットの基礎知識に関する理解度をチェックすることができます。
社員一人ひとりが現在保有するスキルを瞬時に把握できるだけでなく、結果レポートにて企業全体として、どの分野のスキルが不足しているのかまで把握することができます。
次に、スキルギャップを埋める資格試験を選定し、対策テキストやオンライン学習コンテンツを用意します。オデッセイ コミュニケーションズでは対策教材のご案内も承っております。
資格取得後も、従業員にリスキリングの効果を実感させることが大切です。対策教材を用いることで資格取得後も何度も振り返りができ、知識の定着につながります。
企業導入事例より、実際リスキリングに資格試験を活用している事例を抜粋して紹介していきます。
会社業務に欠かせないExcelのスキルアップを図るためにMOSの導入を決定
新入社員も含めた社員全員を対象にExcel上級レベルの知識を習得できる良い機会に
仕事のベースとなるリテラシーのひとつとしてMOSを導入
「キャリア自律」時代に向けて、MOS合格が次の学びを考える契機に
DX人材育成を目的にビジネス統計スペシャリストを採用
データドリブンで顧客体験の向上と地域価値共創への進化を目指す
昇格要件の1つにビジネス統計スペシャリストを採用
実践的な統計スキルを活かし、「次世代経営コンサルタント」としてお客様の課題解決を目指す
一人ひとりのスキルアップを組織貢献につなげるべくVBAエキスパートの取得に挑戦
「道具」を知ってもらい、 “世界を広げる”きっかけを積極的につくっていきたい
こうした企業の取り組みは、DX推進やデジタル人材不足に対応するだけでなく、従業員のエンゲージメントの向上につながります。従業員ひとり一人のエンゲージメントが上がれば、企業にとっても生産性の向上や利益拡大など、さらなる成長が見込めます。ほかにも、新たなスキルの習得により新たなアイデアや新たな価値の創出が期待できるなど、様々なメリットが挙げられます。
ここからは、オデッセイ コミュニケーションズが厳選したリスキリングにおすすめの資格5選を分野別にご紹介します。
エクセル、ワード、パワーポイントなど、日々の業務に必要不可欠なマイクロソフトオフィス製品の利用スキルを証明する資格です。累計受験者数は2023年時点で500万人を突破しています。
いまや「社会インフラ」ともなっているオフィス製品ですが、自信を持って「使いこなせています」と答えられる人はどれくらいいるでしょうか? 企業によって求められるスキルレベルは異なりますが、最低限、MOSの一般レベルにあたる基本的な操作スキルを身につけておくことで日々の業務の効率化や、その後より高度な操作スキルを学ぶ際にも役立ちます。
例えば、とある商業施設の8月の来場者数をエクセルにまとめる作業の場合、すべての日付を手入力していては時間がかかってしまいますよね。エクセルのオートフィル機能を使用すれば、一瞬で日付のデータ入力ができます。
この他にも、セル範囲の書式設定、相対参照・絶対参照、SUM関数やAVERAGE関数といった簡単な関数を扱えること、表やグラフの作成などもMOSの一般レベルで出題される範囲になります。
MOSを学ぶことで知らない機能やテクニックがまだ数多くあることに初めて気づく、ということも少なくありません。今まで作業していたことも、より効率のいい方法を見つけることができたという声も多く寄せられています。
1日あたりに短縮できる時間はわずかかもしれませんが、1か月あたり1年あたりと考えると多くの作業時間を短縮することができます。MOS取得を通して基礎から体系的に学ぶことで、従業員ひとり一人の業務効率化につながるだけでなく、結果として企業全体の生産性向上にもつながります。
データ分析の”実践”に重点を置き、身近に活用できるエクセルを使用したデータ分析技能と、分析結果を正確に理解し、応用する能力を評価する資格です。
一般のビジネスパーソンも業務の中で「データ分析スキル」を求められるシーンが多くなってきました。データ分析と聞くと難しい印象がありますが、エクセルの分析ツールを使うことで、誰でも簡単にデータ分析できるようになります。
面倒な計算はすべてエクセルが処理してくれるので、数学に苦手意識がある人にこそ使いこなしてほしい機能が満載。また、業務で使用するPCにはほぼエクセルがインストールされていることから、「現場で役立つデータ分析を身につけたい」という方にもおすすめの資格です。
企業の皆さまからはデータサイエンティストなどのデジタル人材育成の第一歩として捉えられ、お問い合わせが増えています。
統計に関する知識や活用力を評価する資格です。レベルに応じて体系的な統計活用能力を認定します。
データサイエンティストは、主に「IT全般の知識」「統計学に関する知識」「ビジネススキル」の3つスキルが必要とされています。そのため、統計学に関する知識を体系的に学べる統計検定は、データサイエンティストを目指す方の第一歩としておすすめの資格です。また、AIの仕組みは統計学を含んだ数学知識が必要不可欠となるため、AIエンジニアを目指す方にもぜひ取得してほしい資格です。
VBAエキスパートは、エクセルやアクセスのマクロ・VBA(Visual Basic for Applicationsとは、エクセルやアクセスなどのマイクロソフトオフィス製品に搭載されているプログラミング言語)のスキルを証明する資格です。
VBAはルーティンワークの自動化や大量データの一括処理、業務システムの開発など、企業内で多岐にわたって活用できます。受験者数は2022年4月時点で累計5万人を超え、デジタル人材育成や業務効率化を目的に企業需要も高まっています。
Pythonエンジニア認定試験は、オープンソースの汎用プログラミング言語Pythonの専門知識を評価する資格です。
Pythonは「構文がシンプルで扱いやすい」「豊富なライブラリに活用できる」という理由からプログラミング初心者でも学習しやすいといわれ、受験者も全体の約4割が非エンジニアの方々。AI技術の開発言語にもPythonが利用されていることもあり、近年ますます注目度が上がっています。リスキリングで新たなスキルを身につけたい方や、Pythonの資格を取得してSEとしてキャリアアップを目指す方におすすめの資格です。
以上、「そもそもリスキリングとは?」から「リスキリングに使える資格5選」を紹介しました。また、弊社の営業スタッフブログでは、時代に即したIT人材教育に役立つ記事も公開しています。より詳細な試験に関する情報や企業での活用事例、資格試験を活用したリスキリングに興味関心がありましたら、お気軽にオデッセイ コミュニケーションズ営業部までご相談ください。
社内のDX人材育成はどれくらい進んでいますか? オデッセイ コミュニケーションズでは全国の企業・団体の皆さまに向けて、「DX人材育成と資格活用に関するアンケート調査」を実施しております。ご回答いただけますと幸いです。
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