
取材当日も、本番に備えて模擬試験に真剣に
取り組んでいたミャンマー人研修生のみなさん
建設・製造・IT業界向けに、ミャンマー人材に特化した常用型派遣を行う株式会社MJテクノロジーでは、入社まもない外国人研修生にマイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)受験を必須化。導入からわずか1年足らずで、70名以上のミャンマーの若者たちが、日本語で実施されるExcel・Word・PowerPointの各試験に挑戦し、高得点を獲得しています。
母国語でなくとも体系的な知識とスキルを身につけられる資格試験の特性を生かし、さらに意欲や成長度合いといった「目に見えない力」を可視化する独自の取り組みについて、くわしいお話を伺いました。
MOS研修の目的と導入後の実感についてお聞かせください。
まずは、MOSの実務に近い問題構成を活用して、日本語での業務指示への理解力を高めることが目的でした。
また、MOS研修を導入する以前は、電気・設備・空調など専門分野の授業のみを実施しており、研修生にとっては講師に「教えてもらう」受け身の環境でした。しかし、実際に働き始めると、自ら学んでスキルを高めながら仕事に臨む姿勢が求められます。そうした文化をミャンマー人エンジニアに根付かせることがなかなかできていなかったため、教材を活用して主体的に学習する習慣を育てようと、MOSを導入しました。
MOS導入の最大の利点は、研修生本人は努力しているつもりでも、合否という客観的な結果が出ることで、自分の努力が足りていないことを真正面から受け止められる点だと感じています。研修やテストは内製することもできますが、あえてMOSという外部の試験を利用することで、中立的な指標として会社も本人も納得して取り組むことができています。
なぜ他のIT資格ではなく、MOSを選ばれたのでしょうか?
IT資格には幅広いIT知識を問うものもありますが、当社ではまず業務に直結するソフトウェア操作の習得を重視しています。特定の分野に精通することで自信がつき、収入にもつながるからです。また、MOSは学習教材が充実しており、私たちがめざしていた自学自習の習慣づけにも役立ちます。
ちなみに、ミャンマーではドキュメント作成は専門職の業務とされており、日本のように学生時代から身につける基本スキルではありません。それもあって、標準的な業務ソフトの操作を体系的に学べるMOSが最適だと判断しました。
MOS研修の具体的な内容や工夫について教えてください。
当初は事務スタッフ向けにExcelのみの受験を予定していましたが、現在ではミャンマー人研修生全員を対象に、Excel・Word・PowerPointの順に3科目を約2週間ずつ集中して学習・受験してもらっています。
研修生には来日翌日から出社してもらい、翌々日には自習用ノートPCとMOS公式テキストを配布。貸与PCを自分で管理することで、派遣先での業務環境に慣れる練習にもなります。テキストは就労後にも見返せるように、一人一人に支給しています。
■研修生へのアンケート

※MJテクノロジーのアンケート集計結果より、オデッセイ コミュニケーションズが作成
アンケート収集期間:2025年8月21日~9月2日
アンケート対象:MJテクノロジーのミャンマー人エンジニア26名
また、MOSの試験に合格しさえすればOKとはしていません。毎日、社内SNSで模擬テストの受験回数やスコアを共有してもらいます。研修生同士でも互いの進捗を確認できるようにしているのですが、競争意識よりも助け合う空気が強いですね。派遣先の選定にも影響するので、みんなで協力し合ってスキルを上げていく、日本の大学受験のような雰囲気があります。
さらに、最近は来日前に英語版のMOSを受験してもらい、努力できる人物かどうかを事前に見極める指標として活用しています。以前は複数回の面接と日本語能力検定の結果をもとに選考を行っていましたが、採用する人数が増えるにつれ、それだけでは十分な判断ができていないと感じるようになりました。MOSへの取り組み姿勢は、本人の意識を如実に表すため、人材の採用・育成の精度向上にもつながっています。
- MJテクノロジーのMOS研修のポイント
- • Excel → Word → PowerPointの順に、各科目を約2週間ずつ集中して学習・受験
- • 英語版MOSを来日前に受験し、基本操作を習得。来日後に日本語版で再受験する二段階学習
- • 模擬試験・本試験のスコアを社内SNSで共有し、学習状況を可視化
- • 不合格者には必ず面談を実施し、2~3日後には再受験する流れをつくる
母国語以外でのMOSの受験について、ミャンマー人研修生の反応はいかがでしたか?
もちろん、研修生からは「難しかった」という声が多く聞かれました。特に日本語の「漢字」は大きな壁となったようです。しかし、試験を通じて「文字の理解が進み、仕事のスピードも上がった」といった前向きな感想もありました。
また、ミャンマーでは日々の小テストの結果を積み重ねることが、学力評価や進学に反映される教育制度が一般的です。そのため、研修生は試験を通じて自分の理解度を確認することに前向きで、得点への意識も高い傾向にあります。こうした背景から、MOSのテキストや模擬試験を活用した段階的な学習サイクルは、彼らにとってなじみやすい研修スタイルだったといえます。

今後の展望について聞かせてください。
MOS研修については、ミャンマー国内におけるオンライン学習の環境を整えていきたいと考えています。近年はIT企業での就労希望者が増えており、優秀な人材はまだまだたくさんいます。実際に、クライアントから預かったExcel帳票をもとに、システム化まで自走できる人材も育ってきています。
ネット検索やAIの力を借りられる便利な時代ではありますが、それらを効果的に使いこなすためには、MOS研修で培う基本的なPCスキルや用語のインプットが不可欠です。次のステップとしては、ベンダー資格や電気工事士といったより専門的な資格取得支援にも力を入れていく予定です。
日本で働く外国人材にとって「日本語ができること」は重要ですが、やはり「仕事ができること」が大前提です。自分の仕事にきちんと取り組めていれば、上司や同僚とのやりとりを通して日本語力も自然と向上していくはずです。もちろん日本語でつまずいてしまわないようサポートしますが、日本語だけではなく仕事の質も高められる研修を今後も継続していくつもりです。
※掲載内容は、2025年7月取材時のものです。